前後編でご紹介しているエレミヤ書の学び、今回は後編となります。
【エレミヤ書について】
・エレミヤの預言の中心テーマはユダ王国の崩壊以前は滅びであり、崩壊後は希望であった。
・バビロニアに従うように主張したことで、エレミヤはイスラエルの人々からは裏切り者と見なされ、様々な苦しみを体験することとなった。
【エレミヤ書の内容】
26章
ヨヤキム王の治世の初めに(1)、主からエレミヤに「預言者の言葉に従わなければ呪いの的とする(6)。」と語れと命じられた。祭司と預言者たちとすべての民はエレミヤを捕らえて処刑にしなければならないと言った(8)。アヒカムはエレミヤを保護し、殺されることのないようにした(24)。
27~28章
ゼデキヤ王の治世の初めに(1)、くびきをはめて(2)、ユダの王や近隣諸国の王にバビロンの王ネブカドネツァルに仕えるようにと(6,7)、語れと命じられた。偽預言者ハナンヤはくびきを打ち砕いたが(12)、その年に死に至った(17)。
29章
エレミヤから捕囚の民への手紙。「バビロンに70年の時が満ちれば、連れ戻す(10)。」
29章 11節
わたしは、あなたたちのために立てた計画をよく心に留めている、と主は言われる。
それは平和の計画であって、災いの計画ではない。将来と希望を与えるものである。
30章
「わたしがあなたに語った言葉を巻物に書き記しなさい。イスラエルとユダの繁栄を回復する日が来る。」(1~3)と、主は言われた。
31:15は、以下のように、引用されている。
マタイによる福音書2章 17~18節
こうして、預言者エレミヤを通して言われていたことが実現した。
「ラマで声が聞こえた。激しく嘆き悲しむ声だ。ラケルは子供たちのことで泣き、/慰めてもらおうともしない、/子供たちがもういないから。」
31:31~34
「モーセの契約を破ったので、新しい契約をイスラエルの民のこころに記す」と、主は言われた。
32~33章
エレミヤはゼデキヤ王の宮殿にある獄舎に拘留されていた(32:2)。主が繫栄を回復してくださるので、エルサレムの周辺で土地を買うようになると、主は言われた(44)。
34章
ゼデキヤ王はヘブライ人の奴隷を自由の身としたが、再び奴隷の身分とした(8~12)。
35章
「レカブ人にぶどう酒を飲ませなさい(2)」と主はエレミヤに言われた。父祖ヨナタブが飲んではならないと命じたので従ってきていた(6~10)。ヨナタブの一族は絶えることがないと、ほめられた(19)。
36章
バルクはエレミヤの口述に従って、主が語られた言葉を巻物に書き記したが(4)、エホヤキム王によって燃やされてしまった(23)。そこで、バルクは再びエレミヤの口述に従って書き記し、同じような言葉を数多く加えた(32)。
37章
バビロンのネブカドネツァル王がゼデキヤをユダの国の王とした(1~2)。エレミヤはカルデア(バビロニア)に投降しようとしているとして(13)、長期間地下牢に入れられた(16)。
38章
エレミヤは兵士の士気をくじいているとのことで(4)、水溜めに投げ込まれた(7)。ゼデキヤ王は自分のところに連れこさせて(14)、「バビロンに降伏するように」とエレミヤから語られた。エレミヤは監視の庭に留め置かれた(28)。
39章 エルサレムの陥落
ネブカドネツァル王はゼデキヤ王をバビロンに連れて行った(7)。王宮は焼き払われ、エルサレムの城壁は取り壊わされた(8)。ネブカドネツァル王はエレミヤに関して、「よく世話をするように、何でもかなえてやるように」と命じた(11~12)。監視の庭から連れ出され、家に送り届けられた(14)。
40~41章
エレミヤは総督ゲダルヤ(7)のもとに身を寄せたが(6)、ゲダルヤは殺された(41:2)。
42章
主はユダに残った人々に「エジプトへ行ってはならない」と言われた(19)。
43~44章
主はエレミヤに「エジプトに寄留しているユダの残留者はユダに帰って来られない(44:14)。」と言われた。
45章
「バルクの命はどこへ行っても守る」と、主はエレミヤに言われた(5)。
46章
エジプトの滅亡の預言
47章
ペリシテの滅亡の預言
48章
モアブの滅亡の預言
49章
アンモン、エドム、ダマスコ、ケダル、ハツォル、エラムの滅亡の預言
50章 バビロンの滅亡の預言
一つの国(ペルシア)が北からバビロンに攻め上る(3,9)
51章
エレミヤはバビロンに襲いかかるすべての災いを一巻の巻物に記した(60)。ここまでがエレミヤの言葉となった(64)。
52章
1~27節は、列王記下24:18~25:21と同じ内容
31~34節は、列王記下25:27~30と同じ内容
【注目点】
エズラ記1章 1節
ペルシアの王キュロスの第一年のことである。主はかつてエレミヤの口によって約束されたことを成就するため、ペルシアの王キュロスの心を動かされた。キュロスは文書にも記して、国中に次のような布告を行き渡らせた。
*イスラエルの民は70年間の捕囚の時を過ごした後に解放されるとエレミヤによって預言され、成就した。
【質疑応答】
①27章の中で、偽りの預言者について語られているが、当時の人々はどちらの預言者を信じるか、何をよりどころに見極めていたのだろうか?信じたいと思うことを言ってくれる預言者に流されてしまっていたのだろうか。
→当時の人々が信じたいと思うことを言ってくれる預言者に流されていた。
②36:5 なぜエレミヤは神殿に入ることを禁じられている?
→バビロニアがエルサレムを征服すると預言したエレミヤは、そのためにゼデキヤ王によって拘留されていたので(32:3~10)。
③51:44 「ベル」とは何のこと?
→バビロンで守護神とされていたマルドゥクの別名。
④51:61 「注意して」とは何に注意するのか?エレミヤに反対する人たちに聞かれないように注意するということ?
→「ここまでがエレミヤの言葉である」と、51:64の最後に記されているので、重要であり、また、バビロンの滅亡の預言であるので、語るセレヤに危険が及ばないようにとも考えられる。
⑤エレミヤ書の時代には、イスラエルに住む民が神様に忠実ではなくなったために、大国による侵略を受けていたが、現代で例えばユダヤ人が迫害を受けたり、ユダヤ人としての国(イスラエル)が無かったりしたことに対しては、ユダヤ人の間でどのように解釈されているのか。例えば、エレミヤ書の時代と同じく、イスラエルの民が神様に忠実ではなくなったから神様が罰せられたという風に考えられているのか、それとも他の考え方がなされているのか。
→「イスラエルの民が神様に忠実ではなくなったから神様が罰せられたという風に考えている」人々は、現代では少数派と考えられる。現代のイスラエル国内において、ユダヤ教徒として旧約聖書を学び、戒律に従って生活しているのは少数派と考えられるので。ユダヤ教を信じている人々をユダヤ人と定義すると、戒律を守って、神に罰せられることのないように努力している正統派ユダヤ人は現存しているが、年々少数派となってしまっていると考えられる。
【感想】
・当時の偽りの預言者が、間違っているが人々にとって受けいれやすい、また受け入れたいことを話していると、今の我々でもそちらに流されてしまうかもしれないと思い、当時の人々が流されてしまうのも仕方がない状況なのかなと感じた。
・旧約聖書での神様は厳しい面がよく見られるが、この厳しさも人間が間違った方向に進まないようにするための優しさなのだと思った。
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