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青年たちの聖書研究~第22回『雅歌』編~

執筆者の写真: 明裕 橘内明裕 橘内

今年もあと数日で幕を閉じます。どんな一年だったでしょうか。今回は第22回 聖書研究会 「雅歌」の内容のご紹介です。


【雅歌について】

・「雅歌」という書名のへブライ語の原題は「歌の中の歌」で、すべての歌の中でも最上の歌ということを意味している。漢訳聖書の影響で、「雅歌」と翻訳された。

*1880年(明治13年)に新約聖書全書、1888年(明治21年)に、旧約聖書全書の翻訳が完成された。ローマ字で有名なヘボン宣教師が大きく貢献した。ヘブライ語、ギリシア語、英語、中国語(漢訳)などが参照された。

・「雅歌」は「ヨブ記」「箴言」「コヘレトの言葉」」と共に「知恵文学」と呼ばれるものの一つであると考えられるが、「知恵文学」とは、日常の生活の中に神の働きを認め 、この世界そのものが神の言葉を語りかけていることに気づかせるものであると考えられる。

・「雅歌」は、聖書における相聞歌(そうもんか)である。

相聞歌とは、 万葉集において雑歌 (ぞうか) ・挽歌 (ばんかは辞世や人の死に関するものなどを含む)  と並ぶ三大部立ての一つ。男女・親子・兄弟姉妹・友人など親しい間柄で親愛の情を表現した歌が含まれるが、特に恋の歌が多い。

万葉集は、7世紀後半から8世紀後半(奈良時代末期)にかけて編纂された、現存する日本最古の歌集。約4500首の歌が収められ、 作者層は天皇から農民まで幅広い階層に及び、詠み込まれた土地も東北から九州に至る日本各地に及ぶ。

・「ドーパミン的幸福」は3カ月~3年で尽きてしまい、「オキシトシン的幸福」は安定して継続すると言われるとのことであるが、「雅歌」においては、いわゆる「ドーパミン的幸福」についても語られている。

・「雅歌」が聖書の正典として取り上げられているのは、人間のあらゆるライフステージ(乳幼児期、 学童期、 思春期、 青年期、壮年期、高齢期)において、神様からの知恵を頂くためではないかと考えられる。

*旧約聖典が最終的に決定されたのはヤムニヤ会議(90年頃)とも言われる。

・「雅歌」の解釈について、ユダヤ教においては、神のイスラエルの民に対する愛を象徴的に表現していると理解され、キリスト教会においては、キリストと教会の関係が夫婦の関係にたとえられている(エペソ5:21~33)と理解されることが多かった。


【雅歌の内容】

1:1      ソロモンの雅歌

1:2~3:5  おとめと若者の相聞歌(おとめの友人である女性たちも登場)  

3:6~3:11  合唱  (ソロモンの婚礼の歌)

4:1~8:4  おとめと若者の相聞歌  

8:5~8:14  合唱、おとめと若者の相聞歌


【注目点】

*1:1 ソロモンの雅歌

イスラエルの王ダビデの息子であるソロモン(B.C.970~931年頃)は、最初のエルサレム神殿を建設し、多くの箴言と歌を残した。「ソロモンのために」「ソロモンによって」「ソロモンにささげられた」など、様々な意味の可能性がある。

*王様(1:4)、羊飼い(1:7)と、対象者が変化していることが、理解を妨げていると考えられる。

*「エルサレムのおとめたちよ

   野のかもしか、雌鹿にかけて誓ってください

    愛がそれを望むまでは愛を呼びさまさないと。」

が、2:7、3:5、8:4と、三回も記されているということは、「雅歌」において中心的な考えと言える。

 新改約聖書では、「揺り起こしたり、かき立てたりしないでください。

 愛が目ざめたいと思うときまでは。」


・おとめが積極的に若者を求め(1:4)、若者は「目は・・・、歯は・・・、唇は・・・、首は・・・、衣は・・・」と具体的に美しいと呼びかけている(4:1~11)。


【質疑応答】

①1:6 日焼けすることは、この当時良くないこととされていた?  

  「兄弟たちに叱られてぶどう畑の見張りをさせられたのです。

   自分の畑は見張りもできないので。」  

この「畑」と訳されている言葉は「肌」とも訳せるので、自分の肌の手当てができなかったとも解釈できる。


②1:10「房飾り」とは何のこと?

  イヤリングと考えられる。


③聖書の見出しに「合唱」などと書いてある箇所があるが、なぜ分かるのか?

  詩篇や雅歌はメロディーがついていて、口伝伝承されてきた歴史があるので、

「おとめ」「おとめたち」「若者」に対しての発言などを「合唱」と表現したと考えられる。


④6:4 「ティルツァのように美しく」とあるが、ティルツァとは何?

  ティルツァはヤロブアム(B.C.931~910年頃)が北王国最初の首都とした町。

  ティルツァは美しさを意味した言葉。


【感想】

・聖書のイメージは、列王記や歴代誌などの歴史書やイザヤ書やエレミヤ書などの預言書のイメージだったが、雅歌のような、私たちにも距離が近い書が入っているのは新鮮だった。

 
 
 

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