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執筆者の写真明裕 橘内

青年たちの聖書研究~第15回『エズラ記』編~

今月は、第15回 聖書研究会 「エズラ記」の内容のご紹介です!


【エズラ記について】

・エズラ記、ネヘミヤ記、エステル記は旧約聖書の歴史書の最後の部分である。内容はバビロンからの帰還、神殿やエルサレムの再建、ユダヤ人の生活の復興に関する物語で、紀元前538年~430年の約100年間にわたる。預言者の群の最後に属するハガイ、ゼカリヤ、マラキの三人はこの時代に活躍した。


・エズラ記とネヘミヤ記はもともと一冊の書であった。バビロン捕囚に続くこの時期にユダヤ教と呼びうる宗教共同体が形成されていくが、その過程で祭司エズラと総督ネヘミヤが重要な働きをした。


・歴史を振り返ってみると、サマリヤ(北イスラエル王国の首都)はアッシリアの王によって滅ぼされ、エルサレム(南ユダ王国の首都)はバビロンに滅ぼされ、捕囚として約6万人がバビロンに連れて行かれた。

アッシリアとバビロンの王たちの政策は、被征服民族をその国土から連れ出して他国に離散させることであったが、ペルシアの王たちは追放された民族をその本国に送還する政策を取った。ペルシアのキュロス王は紀元前539年にバビロンを滅ぼし、翌年にエルサレム帰還の勅令を出した。キュロス王の築いたペルシア帝国は世界最大の領土を誇った。


紀元前538年   第一回帰還 (エズラ1章)

紀元前536年   神殿工事着工 (エズラ3:8)

紀元前520年   神殿工事再開 (エズラ4:24)

紀元前516年   神殿工事完成 (エズラ6:15)

紀元前479年   エステル、王妃になる (エステル2:16)

紀元前458年   エズラの帰還 (エズラ7:1、8~9)

紀元前445年   ネヘミヤの帰還 (ネヘミヤ2:1、6,11)

         城壁の完成 (ネヘミヤ6:15)

・歴代誌下の最後(36:22~23)とエズラ記の冒頭(1:1~3)はほぼ同じである。


【エズラ記のあらすじ】

*捕囚からの帰還と神殿の再建

1章 ペルシアの王キュロスは、バビロンにいた捕囚の民に、「神殿を建てるためにエルサレムに帰ってよい」と布告した。

2章 祭司ゼルバベルやイエシュアを含めイスラエルの人々は42,360人(他に

75,000人)、エルサレムに到着し、それぞれが自分たちの町に住んだ(70)。

3章 第7の月になって、民はエルサレムに集まった(1)。祭司たちはイスラエルの神の祭壇を築き、仮庵祭を行った(4)。祭壇の基礎を据えると、祭司も民も皆、主を賛美した(11)。昔の神殿を見たことのある者たちは大声をあげて泣いた(12)。

4章 エルサレム周辺の住民は建築に取りかかろうとするユダの民の士気を鈍らせ脅かす一方、ペルシアの王キュロスの存命中からダレイオスの治世まで、建築計画を挫折させようとした(4~5)。ユダとエルサレムの住民に対する告訴状がペルシアの王に書き送られた(6)。「エルサレムが再建され城壁が完成すれば、ユーフラテス西方の王の領土がなくなります」(16)と。その返事は、「強い王がエルサレムにいて、ユーフラテス西方全土を統治し、年貢、関税、交通税を徴収したことがあった。従って今、工事を中止するように命令せよ(20~21)。」とのことで、強引に武力で工事を中止させた(23)。

5章 預言者ハガイとゼカリヤが預言したので、エルサレムの神殿建築を再開した(1~2)。「バビロンにある王宮の記録保管所をお調べいただきたい(17)」と、バビロンの王に総督タテナイは手紙を送った。

6章 キュロス王による「エルサレムの神殿は再建されなければならない(3)」との覚え書きが見つかったので、神殿再建を支援するように命じた。イスラエルの神の命令とペルシアの王の命令によって建築を完了した(14)。過越祭と除酵祭を行い、喜び祝った(19、22)。

*エズラの帰還と民族の復興

7章 その後、モーセの律法に詳しい書記官エズラがバビロンから上って来た(6)。

祭司であり、書記官であるエズラにペルシアの王は以下のように親書を送った(11)。

「神殿に必要なもので費用がかさむなら、それも国庫負担としてよい。エズラの要求に

は怠りなくこたえるように、財務官に命令しておく。律法を知るすべての者を治めさせ、

律法を知らない者には教えを授けよ。」

8章 エズラは旅の無事を祈り(21)、神の御手に守られてエルサレムに到着した

(32)。

9章 その後、エズラに以下のような報告があった。「イスラエルの民も祭司もレビ人も、カナン人やモアブ人などの忌まわしい行い(偶像礼拝)に従っています。聖なる種族であるはずが、この地の住民の娘を嫁にし、交じり合うようになりました。」(1~2)エズラは罪を告白し、祈った。

10章 すべての捕囚の民はエルサレムに集まるようにと布告が出された。エズラは

「異民族の嫁と嫁の生んだ子から離れなさい」と言い、民は「必ずお言葉通りにします」

と答えた(11~12)。


【注目点】

*1:1 ペルシア

ペルシア帝国は約200年渡って、現在のイラン、アフガニスタン、パキスタンあたりを支配した。

キュロス王の第一年はバビロニア帝国を征服した翌年の紀元前538年と考えられる。


*2:62 自分たちの家系の記録を探したが発見できず、祭司職に就くことを禁じられた。

このようなことがあるので、家系の記録が重要視された。


*4:7 アラム語

4:7~6:18はヘブライ語ではなく、アラム語で書かかれている。アラム語は紀元前8世紀頃から国際的用いられるようになっていて、ペルシア帝国では公用語となった。バビロン捕囚後一般人はアラム語のみを話した。また、イエス様や弟子たちの日常語はアラム語であった。


*7:9第一の月、7:8第五の月

第一の月はニサンの月と言われ、現在の3、4月にあたり、第五の月はアブの月と言われ、現在の7、8月にあたる。


*8:1わたし、エズラのこと

ここから9章の終わりまでは「エズラの回顧録」と言われる。



【質疑応答】

①3:1 第7の月とは今の7月と同じ意味?

ヘブライ暦の第7の月を示し、ティシュリの月と言われ、現代の9、10月あたり、重要な祝祭が多く行われる時期。


②1:4随意の献げ物とは何?  今まで出てきた焼き尽くす献げ物などと違うのか?

・随意の献げ物とは進んで献げる献げ物。銀、金、家財、家畜など。

・焼き尽くす献げ物は、牛や羊など焼く煙が神のもとへ上って、主にささげるなだめの香りである(レビ1:9、13、17)。手を献げ物とする生き物の頭に置くと、その人の罪を贖う儀式を行うものとして受け入れられる(レビ1:4)。手を置くことで奉納者の罪がいけにえになる生き物に移され、神はいけにえの生き物を受け入れ、様々な罪を赦す。


③4:5 参議官とはどんなことをする人?

主の勅令を民に知らせる任務を負った地方執政官。


④8:15 「レビ人が見当たらなかった」とあるが、祭司はいる。祭司=レビ人ではないのか?

祭司<レビ人

レビ族の者たちは、献げ物の用意と聖所を清める基本的な仕事をする。

祭司はアロン(レビ族)とその子孫であり、特別な衣装(出エジプト28:41)を身に着けた。


【感想】

・祭司という職業がレビ人の中でも限定された、特別な存在だったことがわかった。

・イスラエル民族は様々な国に支配されているが、支配する国によって、イスラエル民族を捕囚として別の場所に住まわせるか、あるいは元々住んでいた土地に戻ることを許可するか全く方向性が異なり、興味深いと思った。

・ユダヤ教という宗教は、積極的にコミュニティの外に向けて宣教活動を行うというよりは、自分達の宗教を守っているというような内部へのベクトルが強い宗教という意味で、特徴的な宗教だと感じた。




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