神学校での学び
皆さんは、神学校というところでは、どのようなことを学んでいるのかご存知ですか?
日本国内には現在、約60の神学校と呼ばれる機関があり、大学でも約10校が神学部を設置しています。神学校の場合は、信徒のための学校と、牧師や教職者を養成する学校があります。大学では、卒業生が教会での働き手になるとは限らない場合もあります。入学資格や入試があるか、卒業まで何年かかるかなどは、機関によってかなり異なります。しかし学ぶ内容は、どの機関であっても、同じ4つの領域から構成されている場合が殆どです。今回は、そうした学びの大きな枠組みについてお伝えし、具体的な中身については、今後少しずつ、出来るだけわかりやすく伝えていきたいと願っています。
まず、上で述べた4つの領域とは、聖書神学、歴史神学、組織神学、実践神学と呼ばれるものです。神学という体系をこの4つの領域に整理したのは、19世紀初頭に活躍したドイツの神学者、シュライエルマッハーだと言われています。以降、この分類は多くのところで用いられ、国内のほとんどの神学校や神学部のカリキュラムも、この4領域からなっています。では、ひとつひとつの領域の内容を、科目名を挙げて具体的に紹介しましょう。
一つ目は聖書神学です。これは、新約学と旧約学に分けられることも多く、通常もっとも時間をかけて学ばれるものでもあります。まず、聖書の言語を初年次で学び、それと共に緒論という全体を俯瞰できる学びをします。その後、旧約聖書と新約聖書の各論へと学びを深めていくのが一般的な学び方です。下記のような科目がありますが、それぞれの科目に、旧約神学Ⅰ、旧約神学Ⅱのように番号が付される場合が多く、結果、実際の科目数はずっと多くなります。
語学(聖書ギリシャ語、ヘブル語) ※選択履修になっている機関もあります
旧約緒論・新約緒論(時代背景、本文批評、正典論など)
旧約神学・新約神学(旧約聖書、新約聖書全体について、また各巻の神学的考察)
聖書釈義(聖書の各巻を最古に近い文書から捉える) ※説教の基礎ともなる大切な学びです
二つ目は歴史神学で、年代を追って以下のような科目を学ぶことになります。
古代(ペンテコステ以降の使徒・教父の時代からローマ帝国の国教に至るまで)
中世(数百年に及ぶ豊かな神学と実態)
宗教改革(その意味と展開、ルーテル教会・改革派・聖公会の異同についてなど)
近代における葛藤(啓蒙主義や敬虔主義などへの神学の応答など)
現在の展望(自由主義神学とそれ以降について、様々な福音主義についてなど)
具体的な内容のごく一部を紹介すると、「私たちが礼拝で唱和する『使徒信条』がいつ頃、どのようにして生まれてきたのか」、「プロテスタント教会における様々な教派は、どのような背景と経緯で出来てきたのか」、「カトリックの変動」など、多彩で豊かな事柄を深掘りします。以上に加えて、西洋以外の地域、例えば日本キリシタン史、明治以降のキリスト教史も学びます。
今回は、神学を体系的に捉えるための4つの領域と、聖書神学、歴史神学の代表的な科目を紹介しました。次回は、組織神学、実践神学の豊かな科目を紹介します。
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